BLOGしのざ記

Today 2024/04/19

イベント講演会「目の見えない人は世界をどう見ているのか」

【登録日: 2016年02月06日 】
本日「目の見えない人は世界をどう見ているのか」というテーマで講演会を開催いたしました。


講師は東京工業大学リベラルアーツセンター准教授の伊藤亜沙先生です。
専門は美学と現代アートで、昨年4月講演タイトルでもある
「目の見えない人は世界をどう見ているのか」を出版されました。



この書名について「目の見えない人が見ているってどういうこと?とよくつっこまれる」とのことですが、
目の見えない人は健常者から視覚を除いた存在ではなく
見えない人も視覚ではない手段を用いて見ているのだそうです。


そして見るとはどういうことかについて
①視覚以外の感覚で見る
②道具で見る
③言葉で見る
といった方法を挙げられ、それぞれ具体的な実例をご紹介頂きました。
全盲の少女が作った粘土細工や
バイクの走る音で道路の状態を把握する視覚障害者の話など
普段目でしか見ていない者にとってはまさに目からウロコのエピソード。


3つ目の言葉で見る例の一つ、
ソーシャルビューについては詳しくご説明頂いた後、
会場で体験もさせて頂きました。

ソーシャルビューとは美術鑑賞の一つの方法として伊藤先生が命名したもので、
複数人数で視覚障害者と共に会話をしながら絵画鑑賞をすること。

参加する晴眼者は絵画を見て、
目に見えるもの(サイズや色、形など)と目に見えないもの(絵から受けた印象、呼び起された記憶など)
の2つについて語ります。

描写が進むにつれて語り手の個性が出ていき、
様々な価値観、解釈があることがわかるのです。
複数人で話しているうちに突飛な考えも相対化され、
自分たちなりの新たな見方、鑑賞法を発見することになるといいます。


実際に参加者の皆さんで1枚の現代アートを題材にソーシャルビューを行いました。
使ったのはマレーヴィッチの「フットボールプレーヤー」という絵で、
白地に茶色い四角や黄色い台形、小さな円などの形が散りばめられています。



絵のタイトルを伏せ、皆さんに絵を見て感じたことを発表して頂きました。
「トンネルから色々なものがこちらに向かって出てくる」とか
「テトリスの様にいろいろなものが落ちてきている」、
「木槌とコップと携帯がテーブルに置いてある」など
同じ絵を見ているのに全く異なる様々な解釈が発表されました。

伊藤先生も仰っていましたが、そう言われるとそう見えてくるのがソーシャルビューの面白いところ。
一つの絵画を何通りもの解釈で見る事ができ、新しい発見につながります。


講演終了後、伊藤先生の前にはまだまだお話を聞きたい参加者の列が!
来場者の皆様には、講演を通じ多くの刺激を受けて頂けたように感じました。

伊藤先生の著作『目の見えない人は世界をどう見ているのか』
のご予約はこちらから(クリックすると検索画面に飛びます)