本作は、おそらく今年度の翻訳ミステリーのどんなベスト10にも必ず
ランクインする秀作だと思います。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀
長篇賞&英国推理作家協会賞最優秀賞スリラー賞受賞も納得です。


　主人公は13歳のジョニー。1年前に双子の妹アリッサが行方不明になって
以来、父は家出、母は薬物に溺れ、家庭は崩壊してしまいます。事件を担当
するハント刑事もまた、1年たっても何の成果も挙げられず、さらに事件に
のめり込むあまり、彼の家庭も壊れつつあります。
ジョニーは犯罪歴のある近隣住民を監視しながら、妹を誘拐した犯人をひとり
密かに見つけ出そうとします。そんなある日…。

　
ジョニーとハントを中心に様々な人物の葛藤や苦しみ、そして贖罪が
描かれ、ミステリーというジャンルを超えた読み応え十分な作品となって
います。ただし、いくら大人びているとはいえ、主人公の行動力に対し、
13歳という年齢設定に少し違和感を覚えると同時に、読者によってはそれ
ぞれの人物像や内容に好き嫌いが分かれるかもしれません。

　
　早川書房創立65周年＆早川文庫40周年記念作品と銘打たれ、ポケット・
ミステリとミステリ文庫(上下巻)の二形態で同時刊行された小説です。
　図書館ではどちらも所蔵していますが、ぜひポケミス版の二段組の
分厚～い本でご堪能ください。