スタッフおすすめ!スタッフのオススメ その14 「もの思う葦」
【登録日: 2011年02月22日 】
今回は、太宰治のエッセイ集「もの思う葦」をとりあげようと思います。
ある作家が(たしか小林信彦だったと思いますが)エッセイの中で、太宰治はいいコピーライターになれたのではないか、といったようなことを書いていました。
たしかに、太宰の言葉の中には、記憶に残るような名文句がたくさんあって、今回ご紹介する本にもたくさんあるのです。
試みにちょっとパラパラとめくってみると…、
「権威を以て命ずる。死ぬるばかり苦しき時には、汝の母に語れ。十たび語れ。千たび語れ。」
「わがかなしみ
夜道を歩いていると、草むらの中で、かさと音がする。蝮蛇(まむし)の逃げる音。」
「だまされる人よりも、だます人のほうが、数十倍くるしいさ。地獄に落ちるのだからね。」
などなど、すぐに二つ三つ心に引っかかってくる言葉が出てくるのです。
さて、太宰治というと「生まれてすみません」的な、ウジウジ悩んでいる人といったイメージを持たれているかたが多いかもしれませんが、そうではない、攻撃的な一面を覗かせてくれるエッセイがあるのです。
このエッセイ集最後に収録されている「如是我聞」がそれです。
太宰がその中でしていることは、世間で「老大家」「文豪」などと呼ばれている人にたいして、徹底的に攻撃することでした。
「他人を攻撃したって、つまらない。攻撃すべきは、あの者たちの神だ。敵の神をこそ撃つべきだ。」
というヴァレリイの言葉から始まるこのエッセイは、途中、大学教授を撃ちつつ、本命の老大家への砲撃を開始します。
その相手とは、志賀直哉。
「暗夜行路」や「城の崎にて」などで知られた、白樺派の文豪でした。
「志賀直哉という作家がある。アマチュアである。六大学リーグ戦である。」
「いったい何だってそんなに、自分でえらがっているのか。自分ももう駄目ではないかという反省を感じたことはないのか。強がることはやめなさい。人相が悪いじゃないか。」
と言いたい放題の太宰。しかし、顔を真っ赤にして、両腕を振りつつ、大声でこういった厳しい言葉をはいているさなか、目にはうっすらと涙が浮かんでいる、という姿が想像されるほど、必死に大真面目に太宰は老大家に叫び続けているのです。
ところで、なぜ、太宰が志賀直哉を攻撃したのか、なぜ、こんなにも感情的に書かざるをえなかったのか。それは、読んでからのおたのしみ、ということで…。
「もの思う葦」太宰治著 新潮文庫 B914タ 篠崎ほか所蔵
ある作家が(たしか小林信彦だったと思いますが)エッセイの中で、太宰治はいいコピーライターになれたのではないか、といったようなことを書いていました。
たしかに、太宰の言葉の中には、記憶に残るような名文句がたくさんあって、今回ご紹介する本にもたくさんあるのです。
試みにちょっとパラパラとめくってみると…、
「権威を以て命ずる。死ぬるばかり苦しき時には、汝の母に語れ。十たび語れ。千たび語れ。」
「わがかなしみ
夜道を歩いていると、草むらの中で、かさと音がする。蝮蛇(まむし)の逃げる音。」
「だまされる人よりも、だます人のほうが、数十倍くるしいさ。地獄に落ちるのだからね。」
などなど、すぐに二つ三つ心に引っかかってくる言葉が出てくるのです。
さて、太宰治というと「生まれてすみません」的な、ウジウジ悩んでいる人といったイメージを持たれているかたが多いかもしれませんが、そうではない、攻撃的な一面を覗かせてくれるエッセイがあるのです。
このエッセイ集最後に収録されている「如是我聞」がそれです。
太宰がその中でしていることは、世間で「老大家」「文豪」などと呼ばれている人にたいして、徹底的に攻撃することでした。
「他人を攻撃したって、つまらない。攻撃すべきは、あの者たちの神だ。敵の神をこそ撃つべきだ。」
というヴァレリイの言葉から始まるこのエッセイは、途中、大学教授を撃ちつつ、本命の老大家への砲撃を開始します。
その相手とは、志賀直哉。
「暗夜行路」や「城の崎にて」などで知られた、白樺派の文豪でした。
「志賀直哉という作家がある。アマチュアである。六大学リーグ戦である。」
「いったい何だってそんなに、自分でえらがっているのか。自分ももう駄目ではないかという反省を感じたことはないのか。強がることはやめなさい。人相が悪いじゃないか。」
と言いたい放題の太宰。しかし、顔を真っ赤にして、両腕を振りつつ、大声でこういった厳しい言葉をはいているさなか、目にはうっすらと涙が浮かんでいる、という姿が想像されるほど、必死に大真面目に太宰は老大家に叫び続けているのです。
ところで、なぜ、太宰が志賀直哉を攻撃したのか、なぜ、こんなにも感情的に書かざるをえなかったのか。それは、読んでからのおたのしみ、ということで…。
「もの思う葦」太宰治著 新潮文庫 B914タ 篠崎ほか所蔵