BLOGしのざ記

Today 2024/04/25

図書館員のつぶやき稜線はるかに

【登録日: 2009年08月20日 】
 先週、八ヶ岳の麓でのんびりしてきました。
高原牧場のジャージー牛乳を飲み、ジャージー牛乳でつくったソフトクリームをなめ、焼きトウモロコシをかじったりしていると、舞台はまさに「風立ちぬ」。もちろん松田聖子ではなくて、堀辰雄のほうです。
 
 ジャージー種の生後10日の仔牛は、訴えるようなねだるような純粋無垢の瞳が武器で、「守ってあげたい光線」をばんばん飛ばしています。



 今でこそ一大リゾート地になっている八ヶ岳山麓(野辺山、清里など)ですが、もとは火山灰が積もった荒地で、牧場も高原野菜の畑も、こつこつと開拓した入植農民の執念の産物です。ちょっと歩くと、噴出した大石をラフに刻んだ開拓記念碑がけっこうあるのがわかります。

 さて、オープンテラスで焼きトウモロコシをかじっていると、南の正面に茅ヶ岳が見えました。



 「日本百名山」の著者、深田久弥氏の終焉の地として(登山ファンには)あまりにも有名な山です。深田氏の人となりは 「百名山の人」に描かれていまして、自作小説の真贋をめぐってけっこう綱渡りの人生だったようですが、とことん山が好きな人でした。

 今回、バッグにしのばせたのは堀辰雄でも深田久弥でもなく、「気象のことば 科学のこころ」。若いときは詩人になりたかった気象学者が、巷に氾濫する技術用語の誤用を撃ち、言葉の美しく正しい来歴について大爆発気味に述べています。八ヶ岳連峰の観天望気がてら一気に読んでしまいました。