BLOGしのざ記

Today 2020/03/30

図書館員のつぶやき年末の一日

【登録日: 2014年12月29日 】
ことしも残りわずかとなり、図書館も明日が今年最後の開館日となります。
みなさまも、部屋の掃除などで忙しい毎日を送られていることでしょう。

ところで、今日は二人の文士の、とある年末の一日をご覧いただきたいのです。

一人目は芥川龍之介

「僕は新年号の仕事中、書斎に寝床をとらせていた。三軒の雑誌社に約束した仕事は三篇とも僕には不満足だった。しかしとにかく最後の仕事はきょうの夜明け前に片づいていた。」
(『年末の一日』(「芥川龍之介全集 6」所収 篠崎ほか所蔵)

という忙しい日々を送る芥川。
そして、その後やってきた新聞記者の知人に、
夏目漱石のお墓を案内することになるのですが、
なかなか見つけられずイライラしてしまうという、
なかなか大変な年末の一日となっています。

もう一人は、上林暁

「今年の暮は暇である。(中略)今年の暮は、新年号の小説は一つも書かなかった。どこからも注文がなかったのである。」
(『年末閑散の記』(「ツェッペリン飛行船と黙想」所収 篠崎ほか所蔵)

と、寂しい年末かと思いきや、本人はさほど気にはしておらず、
来年の二月号に2作掲載予定となっているので、その原稿の推敲などをしながら、
のんびりと過ごしている。
自分は流行作家ではなく地味な作家だから、
新年号には不向きと思われているのだろうと上林は自己分析しながら、
「私は今の、この暇な気分を愛している。」と記しています。

夜明け前まで原稿を書き、墓地でウロウロしてイライラする流行作家。
新年号のための小説の注文がなく、暇でありながらその気分を楽しんでいる地味な作家。

はたして、どちらが良いか。
それは人それぞれだと思いますが、上林は最後にこう書いています。

「この歳末の有閑は、時めかぬ作家の有難さだと私は思っている。肩身が狭くなくはないが、羨まれてもいいであろう。」

みなさん、羨ましくないですか?
私は時めかぬ人でありながら、しかも忙しい。故に、非常に羨ましいです!